2012年5月10日木曜日

ゼー六

「店のひとこま」

 
 堺筋本町のオフィス街にある木造の喫茶店。大正2年に和菓子屋として創業。空襲からまぬがれ、店の骨組みや御影石などは創業当時から変わっていない。店内はたった4席。戦後から自家製アイスモナカを販売する喫茶店になったという。

アイスモナカ(100円)は、シャーベットのようで新鮮な味。真冬に食べても、体が冷えないのが不思議だ。アイスモナカの皮は、かつて和菓子屋さんだったことから、もち米を使っているそうだ。昔からの作り方で、毎朝6時から作っているという。コーヒーの豆は、休日に店で焙煎しており、「原始的な方法やから、人には見せられへん」と首を倒しながら笑う3代目の廣瀬光徳さん。アイスモナカとセットで300円。店員のおばちゃんが、目の前でコーヒーミルクを“ストップ”というまで入れてくれる。コーヒーとアイスモナカは、交互に味わうと相性がいい。


歩道を行く人、自転車をこぐ人たちは足をとめて、ひっきりなしにゼ―六の持ち帰り用の窓に集まってくる。お客さんに、「どこまで、どうやって?食べながら?」と声をかける廣瀬さん。「大阪駅まで。自転車や」と返事が返ってくると、おばちゃんは、目にも止まらぬ速さで、新聞紙でアイスモナカを包み込む。帰宅時間が10分で一巻き、20分で二巻きと教えてもらったが、初めて見ると一巻きも二巻きも区別がつかないくらい、全て重装備な包みに見えた。

相席で目の前に座っていた男性は、夕刊に掲載されたゼ―六の記事を読み、「えらい大きく取り上げられたなぁ」と廣瀬さんの方を向きながら話している。目が合うと「ここのページやで」と、まるで自分のことのように嬉しそうに新聞を渡してくれた。













住所:大阪市中央区本町1-3-22
電話:06-6261-2606
営業:AM9:00~PM:6:00(第1・3土曜はPM3:00まで)
定休日:日・祝日&第2・4・5土曜日

 


2012年5月7日月曜日

平岡珈琲店


「大阪で1番古い喫茶店」

 カラカラと扉をひくと、お客さんたちの話声に包まれる。大正10年創業の平岡珈琲店は、地下鉄本町駅から北へ歩いて5分ほどのところ。珈琲を入れているのは3代目の小川清さん。


 店内の木の壁には、写真がずらりと飾られている。プロ以外の方を対象に、無料でギャラリーとして提供しているそうだ。3週間に1度のサイクルで展示物を変え、2年先まで予約で埋まっているという。12年前から始まり、今まで展示されてきたものは、能面、猫の写真、人形など。全身ピンク色の人形ばかり飾られたときはちょっと気持ちが悪かったと、思いだし笑いをする小川さん。「ギャラリーを借りるのは高額。せっかくの作品が埋まってしまうと可哀そうだから、こうしていろんな人たちに見てもらえればね」と話した。


カウンター席で小さな女の子が、外国のコインを手のひらに乗っけて、「おじちゃん、これで払っていい~?」と話している。そんな会話を聞きながら、手作りドーナツ(120円)を食べ、深みのあるブレンド(320円)を飲むと、一人で味わっている気がしない。飲んでいる間にも、次々と常連さんが店に入ってきて、「もうドーナツ売り切れました~」と呼びかける小川さん。杖をついたお婆さんは、それでもいいよと頷きながら席に座る。

 カウンター席に一人で座っていた女性は、祖父の代からの常連で、「あそこの珈琲はおいしいで」と話すのを小さな頃から聞いていたそうだ。そして、平岡珈琲店の近くでアルバイトをしている頃、毎週のように通うようになったという。この日は、近所で教えているオーボエ教室の帰りに立ち寄ったと話し、「今日は、生徒さんが吹けるようになって嬉しい」と目を細めながら、コーヒーカップを口に近づけた。

岡珈琲店
〒541-0048 
 大阪市中央区瓦町3-6-11
06-6231-6020
月~金 午前7時半~午後6時
土   午前7時半~午後1時
定休日 日・祭日