2012年8月16日木曜日

うてな


「見晴らしの良い高い場所」


 

「うてな」とは、見晴らしの良い高い場所という意味。店長の坪倉さんは、公園のすべり台の上に立ったときをイメージしたという。地下鉄中崎町駅から北へ歩いて5分もかからない。古い街並みで、店の通りには長屋が連なっている。

 昭和戦前に建てられた長屋の壁は、下地の土壁があらわになっていて、表面を触るとザラザラ。天井を見上げると、真黒な木の骨組みが見える。床には防空壕の痕も見え、古さを醸し出している。1階が喫茶店で、坪倉さんは2階に住んでいる。

 坪倉さんは、学生時代から純喫茶巡りが好きだったことが高じて、10年ほど前に喫茶店を開こうと決意。京都の御多福珈琲店で一ヶ月間働き、2006年にうてなを開いた。豆は、御多福と同じ西陣の焙煎所で仕入れている。焙煎所へ見習いにいった初日、師匠と一日中、囲碁の相手をさせられたと思い出し笑いをする坪倉さん。コーヒーを味わうのではなく、お客さんが喫茶店の雰囲気を味わえるようなお店になるように、と師匠から教わったという。

 
 沸騰しっぱなしのやかんの湯気や、一時間ごとに「コーンコーン」と鳴り響く壁掛時計の音を聞いていると、学生時代に過ごした合宿所や食堂にいるみたいな気持ちに。陽も落ちれば、まるで近所の家に遊びにいくようにポツリポツリとお客さんが集まってくる。気さくな坪倉さんの一言で、客のみんながプッと吹き出し笑いをするような温かい喫茶店だ。





大阪市北区中崎西1-8-23

06-6372-1612

午後0時~8時

火曜日・第1月曜日定休日